

成年後見制度とは
<概要>
成年後見制度とは、認知症や精神障害などによって判断能力が不十分な方を保護し、支援するための制度です。
本人の意思を尊重し、その人らしい生活を送れるように、財産管理(不動産や預貯金の管理、遺産分割協議などの相続手続き)や身上監護(福祉サービスの利用契約や施設入所・入院契約、履行状況の確認など)等の法律的な支援を行います。
成年後見制度は本人の権利を擁護し、悪徳商法などから保護する役割も担っています。
<歴史>
現在の成年後見制度は2000年の民法改正によって導入されました。介護保険制度の施行と同時期です。
それ以前は1898年(明治31年)に制定された「禁治産・準禁治産制度」でした。この旧制度には社会的偏見と差別の助長、画一的な保護の内容、保護の実効性の低さなどの問題点が指摘されていました。
これらの問題点を踏まえ、「ノーマライゼーション(障害のある人もない人も、ともに地域で生活を送れるようにする)」や「自己決定権の尊重」の理念を取り入れ、より柔軟で利用しやすい制度として成年後見制度が創設されたのです。
その後も、社会情勢の変化に合わせても見直しが進められており、2016年には「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が制定され、制度のさらなる利用促進が図られています。
成年後見制度の概要・歴史
【法定後見】と【任意後見】
成年後見制度には大きく分けて【法定後見】と【任意後見】の2種類があります。
<法定後見制度>
本人の判断能力が既に不十分な場合に、家庭裁判所への申し立てにより利用されます。
本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があります。
「後見」:判断能力がほとんどない方
「保佐」:判断能力が著しく不十分な方
「補助」:判断能力が不十分な方
家庭裁判所が、本人にとって最も適切と判断する人を成年後見人等として選任します。
成年後見人等は本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をする時に同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。
<任意後見制度>
本人がまだ判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、誰にどのような支援をしてもらうかを、あらかじめ契約で決めておく制度です。
公正証書で契約を結び、実際に判断能力が低下した際に家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらうことで、契約内容が効力を持ちます。
本人の意思を最大限に尊重できることが特徴です。
任意後見の3つの類型
任意後見契約には【将来型】【移行型】【即効型】の3つの類型があります。
<将来型>
任意後見契約の最も基本的な形です。本人の判断能力が十分あるうちに任意契約を結び、実際に判断能力が低下した際に家庭裁判所へ申し立てることで任意後見人により支援が開始されます。
元気なうちから将来に備えておくことができ、安心感に繋がる反面、契約締結から支援開始までの期間が長くなることが多いため、任意後見受任者との定期的な連絡や見守り契約を併用することが望まれます。
<移行型>
将来型に加え、「見守り契約」や「財産管理委任契約」「死後事務委任契約」などを同時に締結する類型です。
本人の判断能力が低下する前から任意後見受任者によるサポートを受けることができ、判断能力が低下した際には任意後見契約へ移行します。
契約内容が複雑にはなりますが、途切れることのない継続的なサポートが期待できるでしょう。
<即効型>
任意後見契約の締結とほぼ同時に、家庭裁判所へ後見開始の申立てを行う類型です。すでに本人の判断能力がやや低下している場合に利用されます(判断能力の低下が著しい場合は法定後見制度の対象となります)。
これらの類型は本人の状況や、将来どのような支援を希望するかによって選択されます。
一人で悩まず、専門家(弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士等)やケアマネージャー、地域包括支援センター等に相談し最適な方法を考えることが大切です。
任意後見の実態
任意後見制度は、成年後見制度全体の利用者数と比較して、非常に利用率が低いのが現状です。法務省の調査では、任意後見契約の登記件数は12万件あるにも関わらず、実際に後見が開始されている(契約の効力が生じている)のはわずか数%に過ぎず、成年後見制度全体の約1%にとどまっています。
これは認知度の低さが大きな要因と考えられています。
また任意後見が開始されると、家庭裁判所により必ず任意後見監督人が選任されます。監督人は、任意後見人が適切に職務を執行しているかを監督する役目を持っており、本人の財産保護のために重要ですが、監督人への報酬が発生するために本人の費用負担が増大する側面もあります。
<外部リンク>